『資本論』カール・マルクス著(第三巻 資本主義的精算の総過程)
岡崎次郎訳 大月文庫
原則「 」は本文引用、( )は小生補記
第四篇 商品資本および貨幣資本の商品取引資本及び貨幣取引資本への転化(商人資本)
リモンチェッロ |
第十六章 商品取引資本
商人資本(商業資本)は、商品取引資本と貨幣取引資本という二つの形態に別れる。商品資本は流通過程にあって商品と貨幣の形態的変態を絶えず行っており、この機能が特殊な資本の特殊な機能として独立化され、分業によって資本家に割り当てられた機能として固定する限りで、それは商品取引資本または商業資本になる。運輸や商品の保管など、商品資本の流通中に付随的に起こる事柄は、商品取引資本固有の諸機能と混同されている。商品取引業者として市場に現れる資本家は貨幣資本の所有者であり、商品の運動を媒介する。G-W-G′。商品取引資本に、独立に機能する資本の性格を与えるものは、独立の流通担当者である商人が貨幣資本をこの立場で前貸しすることである。商人資本にとって、産業資本にとってのW-Gに対応しているのは、G-Wであり、商品取引資本としてはG-W-G′として貨幣が還流される。
商人資本が存在可能である理由は以下。資本量が、産業資本自身の業務で営む場合よりも、商人資本で営む方が少ない。商品を貨幣に転化する速度が速い。商人資本の一回転が、一つの生産部面内の多数の資本の回転だけでなく、いろいろな生産部面の資本の回転も含むことができる。
商人資本の回転は、いくつかの産業資本の回転総計に等しい。総貨幣資本のうち商人資本として機能する部分は、商人資本の回転が速いほど小さい。商人資本の総額は、生産が発達していないほど流通している商品総量に占める割合は大きいが、より発達した状態に比べれば小さくなる。
商人資本が商品を買って売るのは、実際は同時に行うのだから、商人資本は商品資本と貨幣資本とから成っていることになる。流通手段としての貨幣の充用に支払手段としての充用や信用制度が結び付けば、貨幣資本部分は、この商人資本が行う取引に大きさに比べて一層小さくなる。
商人資本は流通部面で機能しているのだから剰余価値は生み出さない。商品の販売で剰余価値が実現されるのは、すでに商品の中にそれがあるからである。商人資本が流通期間の短縮に役立つ限りで、それは産業資本が生産する剰余価値を増やすことを手助けする。
商人資本が、市場の拡張を助け、資本家の間の分業を媒介して資本がより大きな規模で仕事をすることを可能にする限りにおいて、その機能は産業資本の生産性とその蓄積を促進する。商人資本が資本のより少ない部分を貨幣資本として流通部面に閉じ込めておく限りでは、資本のうちの直接に生産に充用される部分を増大させる。
第十七章 商業利潤
商人資本が得る利潤は、生産的資本全体が生み出した剰余価値の一部分であり、その分け前は資本の大きさに比例する。産業資本と商人資本の間に利潤率の差がなくなるように資本は移動する。商人資本は商品を安く買って高く売ることで利潤を得ることが出来るのは、生産価格で買うからではなく、その利潤の分を安く買うことができるからである。
歴史的に見れば、最初は商業利潤が産業利潤を規定し、資本主義的生産様式が発展して生産者自身が商人になってからはじめて、商業利潤は、総剰余価値のうちの一部として商人資本に帰属するようになる。
第十八章 商人資本の回転
(省略)
第十九章 貨幣取引資本
産業資本の流通過程で、また商品取引資本の流通過程で、貨幣が行う純粋に技術的諸運動(貨幣の払い出し、収納、差額の決済、当座勘定の処理、貨幣の保管など)が、独立して特殊な機能となった資本を、貨幣取引資本という。
貨幣取引業(貨幣商品を取り扱う商業)は国際的交易から発展する。両替商は為替銀行へ発展する。貨幣制度一般は別々の共同体の間での生産物交換の中で発展する。両替商と地金取引業とは貨幣取引業のもっとも本源的な形態である。
商業一般(前資本主義生産様式での商業も含む)から、次のようなことが生じる。第一に、蓄蔵貨幣としての貨幣の集積、第二に、貨幣の運動に関する諸業務。貨幣取引業者は、最初は商人や出納代理人としてこの業務を行う。地金取引そのものは、国際収支の状態やいろいろな市場での利子率の状態を表現する為替相場によって規定されており、地金取引業者はただ結果を媒介するだけである。貨幣取引業は、貨幣流通の技術と、貨幣流通から生ずるいろいろな貨幣機能とに、関係があるだけである。このことが貨幣取引業を商品取引業から区分する。商品取引業はG-W-G′で貨幣取引業はG-G′であるが、このG-G′の媒介は、変態の物的契機に関係するのではなく、その技術的諸契機に関係するだけである。
第二十章 商人資本に関する歴史的事実
(省略)
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