2015年10月19日月曜日

資本論(第1巻)第3篇 絶対的剰余価値の生産 第7章 剰余価値率

第七章 剰余価値率

【感想】:数字の意味を理解するのは大切だ。数字には意図や場合によって恣意があるから。マルクスの言う剰余価値率の分母は全部の資本ではない。この数値にも意図がある。

第一節 労働力の搾取
資本家が前貸しした資本Cを用いてC´の商品を生産した場合、生産手段に支出する分(=不変資本)をc、労働力に支出する分(=可変資本)をv、剰余価値をmとすれば、C=c+v、C+m=C´。
資本Cはmだけ増大してC´となったが、C´は再び前貸し資本として用いられる(したがって、剰余価値mは不明にされる)。
不変資本に含まれている労働力は労働者の再生産に必要な価値(死んでいる労働)であるが、実際の生産過程においてはそれが自ら活動する労働力として現れ、可変資本に転化する。この可変資本に転化する労働力が剰余価値となる。「資本主義的生産の立場から見れば、この全過程は、労働力に転換される元来は不変な価値の自己運動である。過程も結果も、この価値のおかげである。」労働が自ら価値を増殖して可変資本として商品価値に上乗せされるように見えるのは、資本主義的生産に内在する一つの矛盾(延長され労働が隠蔽されているという)を表しているだけなのである。
資本に対する剰余価値の比率、m/CorC´は経済的意義を持っているが、これについては第三部で論ずる。ここでは、剰余価値率をm/vと定義する。その意味合いは次の通りである。価値増殖に必要な生産手段に資本の一部が使用されなければならないが、それらは投入される労働量を吸収するだけあれば良いのであって、その価値が上がろうが下がろうがまた土地や海のように無価値(商品として貨幣に換算された価値として)であっても、価値創造と価値変化には影響を与えないからである。
一労働日のうちこの再生産(=資本家によってすでに支払われた価値=労働者自身の再生産に必要な商品等の価値)が行われる部分を必要労働時間と呼び、この時間中に支出される労働を必要労働と呼ぶ。
労働者が必要労働時間を超えて労苦する、一労働日についてのこの時間を剰余労働時間と呼び、この時間に支出される労働を、剰余労働を呼ぶ。
剰余価値率を、対象化された労働の形で表したのがm/vだが、これを流動している労働の形で表せば、(剰余労働/必要労働)となる。
「それゆえ、剰余価値率は、資本による労働力の搾取度、または資本家による労働者の搾取度の正確な表現なのである。」
普通の計算方法では、剰余価値率はm/CorC´C=c+v、=c+v+mだから、ここで定義したm/vよりもずっと小さい値となる(例えば、C=20シリング、c=4シリング、v=3シリング、m=3シリング、従ってC´=30シリングなら、剰余価値の率を示す普通の計算方法では3÷20または3÷301520%だが、ここで再定義した剰余価値率では100%となる)。

第二節 生産物の比例配分的諸部分での生産物価値の表示
今まで述べてきた考え方に従って、20ポンドの綿花を材料として、日価値3シリングで雇われた労働者が、紡錘や蒸気機関や燃料などの労働手段や補助材料を用いて12時間の労働を行い、20ポンドの綿糸を作る場合を例にとって、綿糸という生産物についての価値の分析を行い、それの価値量を貨幣量と労働時間量で表現すると次のようになる。綿花20ポンドの価値量=20シリング=40時間、労働手段や補助材料の価値が綿糸に移動した価値量=4シリング=8時間、労働者が自分自身を再生産するのに必要な価値量=3シリング=6時間、剰余価値=3シリング=6時間、出来上がった綿糸20ポンドの価値量=30シリング=60時間。「今ここで示されたのは、生産物価値のうちの機能的または概念的に違った諸部分は比例配分的諸部分で表されうる、といことである。」
この分析結果を例えば次のように思い込むこともあり得る。「価値増殖過程に関心を持ちながら理論的にはそれを曲解するばあいには、なおさらそうである。」
12時間の労働時間で20ポンド綿花(価値量=30シリング)を製造するのだから、紡績工は、の労働日の最初の8時間で綿花の価値(=8/12x30=20シリング。)を、次の1時間36分で消費された労働手段の価値(4シリング)を、さらにその次の1時間12分では労賃の価値(3シリング)を生産または補填し、そして、ただあの有名な「最後の一時間」(正確には1時間12分)だけを工場主に、剰余価値の生産に、ささげるのだ、と。」(この考えは、1時間当たりの労働の価値量が2.5シリングで計算されている。だが、資本家が買った労働の価値量は1時間当たり0.5シリングであるから5倍の開きがある。ここに思い込みがあるとすれば、その理由は、労働の二面性について理解していなからであろう)。「こうして、この紡績工には、二重の奇跡を行う義務が負わされる。」(一労働日で五労働日分の価値を生むかのような奇跡を遂げねばならないという義務を負わされる)

第三節 シーニアの「最後の一時間」
省略

第四節 剰余生産物
生産物のうち剰余価値を表していう部分を剰余生産物と呼ぶ(剰余生産物の高さ=富の高さは、剰余価値率と同様な考えに基づいて提示された概念で、先の綿糸の製造の例でいえば3シリング分、つまり20ポンドで30シリングの生産物の内、10分の12ポンド分に当たる)。


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