第十六章 剰余価値を表す種々の定式
【感想】:剰余価値率とその意義については既に七章でのべられている。しかしその後、いろいろな概念が明確になってきたので、改めてその意義を明確にした、という感じ。
すでに見たように、剰余価値率は次のように表される。
Ⅰ (剰余価値/可変資本)=(剰余価値/労働力の価値)=(剰余労働/必要労働)
これらの定式は(労働者にとっての必要分に対するそれ以上の分の比率を表したもので)概念的に厳密なものである。はじめの二つの定式は、価値と価値の比率を示している。第三の定式は、これらの価値が生産される時間と時間の比率を表している。
古典派経済学では次のような派生的な諸定式に出合う。
Ⅱ (剰余労働/労働日)=(剰余価値/生産物価値)=(剰余生産物/総生産物)
これらは(一労働日の生産物価値が資本家と労働者に分割される割合を示したもので)単に別の形態の比率として表現されているものである。ここで、生産物の価値というのは一労働日に創出された価値だけを意味していると想定される(生産物に含まれる不変部分は含まれていない)。
Ⅰの定式で示されている剰余価値率は労働の搾取度を示しているが、Ⅱの派生的な定式は、労働の搾取度を示してはいない。
例えば、L・ド・ラヴェルニュ氏の推算を用いると、イギリスでは農耕労働者と資本家(=借地農業者)との間における、生産物価値の分け前比率は3:1なので、剰余価値率は300%となる。
Ⅱの派生的定式は、剰余価値と労働力の価値とを、価値生産物(の生産物価値)の諸部分として表すことであるが、この表現は、資本関係の独自な性格、すなわち可変資本と生きている労働力との交換や、その交換に対応する生産物からの労働者の排除をおおい隠し、労働者と資本家とが生産物を分け合うという協働関係を示すという間違った外観を与えるものである。
資本家は労働力の価値を支払って、実際には生きている労働力そのものの処分権を受け取ることが出来るから、Ⅰの定式と同じ値を表す次のような第三の定式が成り立っている。
Ⅲ (剰余価値/労働力の価値)=(剰余労働/必要労働)=(不払労働/支払労働)
資本は、A・スミスが言うような労働に対する指揮権だけではなく、本質的には不払労働に対する指揮権を持っている。また、一切の剰余価値は、それが後になって利潤や利子や地代などというどんな特殊な姿に結晶しようとも、その実体から見れば不払労働の物質化なのである。
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